Snuggly Fuzzy
「眠くなるほどゆっくり編むホームスパンツイード」
“ツイード”と聞くと、目の詰まった、そしてゴツゴツした粗野な生地を思い浮かべるかもしれません。しかしNIHON HOMESPUNのツイードはちょっと違います。複雑な見た目からは想像できないほど、ふんわりとしていて暖かく、さらに軽い。それが眠くなるほどゆっくり編まれたNIHON HOMESPUNのツイードです。
Creative Direction by kontakt
Cinematography by Yasuyuki Takagi
Video Editing by Christoffer Rudquist
Audio by Jiro Murata
Photography by Takuya Horiguchi
1955年創業。NIHON HOMESPUNは岩手県の花巻市にあります。HOME(家)、SPUN(紡ぐ)という言葉の意味からも分かるように、本来はイギリスのスコットランドやアイルランドの農家が、放牧する羊の毛を刈り、染め、そして手つむぎをした糸で編んだ生地をアウターやマフラーにして寒い冬を凌いだり、農閑期の副業として生活を支えていました。戦後、同じような産業が岩手県でも、織機一式をスコットランドから輸入したことで定着します。しかしNIHON HOMESPUNは、 “家庭”で作るものでもないですが、生産工場というよりも、まるで作家活動に近いものづくりをしています。固定観念に縛られることなく、羊毛以外にも、シルクやレーヨン、リサイクルポリエステルやオーガニックコットンなどを使用したNIHON HOMESPUNのさまざまな材料を駆使したツイードは、国内外のファッションブランドからも一目を置かれるようになります。ホームスパン本来のハンドメイドならではの“優しさ”を大切に、糸に負担をかけることなくゆっくり編まれていく。そしてできあがった生地はたっぷりと空気を含みふんわりと柔らかく、そして暖かく、着心地も軽やかなのが特徴です。
2022-23AWコレクションでAURALEEは初めてNIHON HOMESPUNのツイード生地を使用しました。デザイナーの岩井はできあがったアウターやパンツ、ワンピースドレスを見て、「こんなに雰囲気があって、ボリュームがあるのにも関わらず、着心地が軽いのがいい。特に冬になると重量感のある服を着る日が多くなると思うので、こうした軽い着心地のものがあれば便利だし、コートを着て出かけるのが億劫な時とかにも、これだと少し気分を変えてくれるかもしれない」と話します。
色はグレーやブラウンの杢糸を中心に編み込んだアースカラー。デザイナー自身も、できあがってくるまでは把握できていないほどたくさんの種類の糸が使われています。しかしその糸たちが平面的な生地に奥行きと立体感を与えます。
「糸が良ければいい生地になる」とはNIHON HOMESPUNの創業者である菊池完之さんが口がすっぱくなるほど言い続けていることです。なので今回できあがった生地も、糸本来が持つ硬さや柔らかさ、そして形状差が生む凹凸感を十分に感じられるAURALEEらしいものになっています。いわゆる受注・発注の関係性ではなく、コラボレーションのように作られたホームスパンツイード。一体どんな人たちがどんな想いで作っているのでしょうか? 岩手県花巻市にあるNIHON HOMESPUNをデザイナーの岩井と訪ねました。