山羊のうぶ毛から
モンゴルへ足を運び、遊牧民である生産者と顔を合わす。ときに彼らの移動式住居のゲルで食事をするなどして、生産者との信頼関係を築き、良質なカシミアをわけてもらう。AURALEEのカシミアニットは、原毛選び、まさに生地の宝石の原石を探しに時間と手間をかけて作られています。
綿毛のようにフワフワとした極上の風合いを持つベビーカシミアと呼ばれるものは、生後半年未満のカシミヤ山羊から、初めて採毛された“うぶ毛”。シンプルなものこそ、こだわる。AURALEEの定番ニットとなっています。私たちがベビーカシミヤの生産地であるモンゴルを初めて訪れたのは、2016年9月のこと。首都ウランバートから続く広野をランドクルーザーで駆け抜け、カシミヤ山羊やラクダの放牧を行う遊牧民たちに会いに行きました。
遊牧民たちは羊や狼の毛皮でできた移動式の住居"ゲル"で暮らしています。モンゴルには伝統的にもてなしの文化がありますが、私たちが訪れた時も、シチューやパン、馬乳酒などの豪華な食事で迎えてくれました。
9月でも朝晩は氷点下まで冷え込む寒さ。暖かいシチューが身に沁みます。遊牧民たちとウォッカを飲み交わし、あたたまった身体でゲルの外に出てみると、そこには見たこともない満点の星空が広がっていました。
遊牧民たちに家畜たちとの1年の生活について聞いてみました。
「放牧の真っ盛りである夏は、家畜の餌となる牧草を求めて移動を繰り返しています。そして秋は冬の寒さをしのぐための準備期間のようなもの。干し草を蓄えたり、フェルトを作ったりと、忙しい日々を送っています。そしていよいよ冬です。-30℃になることも珍しくないため、家畜たちが無事に越冬できるように山の陰に移動し、我慢の日々が続きます。春になると、いよいよ採取の時期です。暖かい季節に向けて生え変わり始める山羊の毛を、櫛で優しく梳いてあげるんです」。
寒暖差の激しい山岳地方に生息するカシミヤ山羊の体は、寒さから身を守るための剛毛に覆われており、ニットとして使用できるのはその下に生える柔らかいうぶ毛のみ。
中でもベビーカシミヤは1頭から採取できる原毛が30-40gしかありません。ウールと比べると、その量はおよそ1/100ほどしかなく、ベビーカシミヤを手に入れる事ができるブランドもごくひと握り。「繊維の宝石」とも呼ばれるベビーカシミヤは、厳しい自然と遊牧民が生んだ奇跡の原料と言えます。
AURALEEはベビーカシミヤの風合いを最大限引き出すため、定番カラーの〈NATURAL BROWN〉では染色を行わず、原毛の奥行きのある色味をそのまま活かすことで、極上の肌触りを実現。
また染色を行う場合でも、低温でじっくり時間をかけて染め上げています。素材に与える負担を極限まで少なくし、驚くほど柔らかな風合いを残すためです。
肌触りのよく上質なカシミヤほど繊維長が長いため、確かに毛玉もできます。しかし天然素材の毛玉は軽いブラッシングで簡単に取ることができます。手入れをして着続けたニットは驚くほど滑らかに。
毛玉すら愛おしく感じるベビーカシミヤを、この冬のワードローブのひとつに。